65億人の殺人容疑者 問題編
1O分で読めるショートショート小説です。無料です。(当たり前)
構想も1O分、書いたのは2時間くらいです。難易度は30ぐらいですので、難しくありません。
65億人の容疑者
探偵サイトHは知るヒトぞ知るサイトである。今日も局長であるA氏の下、あらゆる依頼が立て込んでくる。ネット界隈の揉め事、ネットストーカーの正体、オンラインゲームのレベル上げ、ネットペット世話などいろいろな事件をこなす。A氏は時折、自分がやりたかったのはこんなもんじゃないと嘆いていた。
六月七日、探偵サイトHにある一通のメールがやってきた。警視庁の捜査部のM部長からの依頼であった。
送信者:M部長 2008/06/07 11:32
題名:探偵サイトHのA殿へ
貴公にしか解けない問題がある。
ネットで公開された情報を元に行われた殺人事件だ。それによって、殺された人間が三名もいる。しかし、誰一人容疑者がつかめない。
このままでは、この情報を元にした殺人が広まってしまう。それだけはなんとしても避けたい。ぜひ、貴公のお力をお借りしたい
A氏は警視庁など公安からくる依頼はすべて断っていたが、ネットでの公開された情報という点について、気になり、M部長からの依頼を受けることにした。
A氏はM部長から電子メールで送られた、テンプレート殺人事件と書かれた資料を読み漁った。
テンプレート殺人事件
〇 殺害された被害者の情報
K県、B男(63) 無職
死亡推定時刻 五月十八日、十一時ごろ
遺体確認時刻 五月十九日、七時ごろ
死体第一発見者 B男の妻であるE子備考 当初は事件性がないものとして処理されたが、C美の事件と類似点が多々あり、六月三日に一般情報として公開した。
U県、C美(22) 国立N大学四年生
死亡推定時刻 六月二日、十一時ごろ
遺体確認時刻 六月二日、十九時ごろ
死体第一発見者 C美の彼氏、F朗備考 事件性があるものとして公開へと踏み切る。その際、B男の事件と同じ手口だったもあり、関連性があると判断し、B男の事件も情報公開をした。
W県、D助(37) 新聞配達員
死亡推定時刻 六月六日、十一時ごろ
遺体確認時刻 六月六日、二十二時ごろ
第一発見者 G子、なお、D助とは一度も会っていない
〇 殺害方法
完全犯罪サイト、X、と呼ばれる、誰にもばれない殺人の仕方というページに書かれた方法の手口で殺された。
〇 現在の状況
六月三日、二件目のC美が殺されたことから、マスメディアはこの事件について積極的に報道を始めた。その際、一件目の事件も同様の手口で殺されたとして世間に広まった。
なお、完全犯罪サイトXについての情報を広めないように協力を申し出た。そのため、ネット上に公開されているとは言え、あまり知る者はいない。
だが、匿名掲示板などでは、完全犯罪サイトXについての噂が広まった。このままでは世間に広まるのも時間の問題だ。迅速なる解決が望まれる。
A氏は資料を読んだあと、完全犯罪サイトXへとアクセスした。
完全犯罪サイトX
誰にもバレない殺人の仕方 最終更新日 五月二十五日
誰にもバレない殺人の仕方と呼ばれるページで書かれていた殺害方法はとても巧妙なものだった。まさに完全犯罪と呼ばれるものだった。
――殺人方法がわかっても、容疑者が誰なのかわからない。まるで芸術の域にまで達した殺害方法だ、とA氏は呟いた。
A氏は悩んだ。完全犯罪のテンプレートが広まり、65億人が容疑者になってしまったのだ。その中から犯人を見つけ出すのは徒労であった。
行動範囲や時刻を狭めても、容疑者は次から次へと出てくる。
時間、場所、手段のすべてがクリアできる人間が容疑者なのだが、この完全犯罪テンプレートには、その三つがないため、犯人を絞ることができない。
……誰が犯人なのか、わからない。どうすればいい?
A氏は迷宮入りするであろう事件に苦しみ、デスクトップの画面をつかんだ。傍から見るとノイローゼに見える行動であった。
A氏はデスクトップの画面にあったあるものを捉えた。
「可能性はあるな」
A氏はニヤっと笑みを浮かべ、一通の電子メールを作成し、それを送信した。
送信者:A氏 2008/06/07 16:31
題名:M部長殿へ
容疑者と思われる人間とコンタクトを取ってみます。
――Bパートに続く↓