“逆に”風刺や皮肉がきいた現代風グリム童話、“25人の白雪姫”を書いてみた

 もうこちらで既に書いたんですが、皮肉や風刺がきいたのがないので書いてみました。現代風グリム童話と思って読んでください。

25人の白雪姫


 F市W山で小学生のしらゆき(7)を毒殺したとして、S社勤務の副社長、M実容疑者(29)が殺人容疑で逮捕された。

 しらゆきとM実容疑者とは内縁関係で血がつながっておらず、しらゆきは同社勤務の社長の連れ子であった。

 先日、女児の首にリボンで首を絞められたような傷跡があったために、家庭裁判所は強制隔離し、「7人の小人」と呼ばれる児童施設に入所させた。

 ところが、M実容疑者はおばあさんに変装し、しらゆきちゃんと接触していた。M実容疑者は自分で作った毒入りリンゴ飴をしらゆきに食べさせ、しらゆきが自宅の廊下で倒れて、息を引き取った。生き返ることはなかった。

 普段はおとなしくM実容疑者、しかしながら、美しさに関しては人一倍貪欲であった。普段から鏡を持ち歩いていたらしく、時折、鏡を覗かせては一番、キレイなのは誰? と同僚は口にしていた。


 最近、このような白雪姫型殺人が流行っている。白雪姫型殺人とは、知らないおばさんからお菓子をもらい、それを食べた児童が毒殺された事件である。お菓子以外にも直接、首を締めて殺したり、知らない男性にカネを渡して殺してもらうといった犯行がそれである。


 この特異な事件の驚くべき所は同一犯の犯行ではなく、義母による犯行だったことにある。知らないおばさんとは継母が化けたおばさんのことだったのだ。

 彼女らは動機について語ると『夫が私よりも連れ子である子供をかわいがる。一番キレイなのは私だ』と一斉に口を開く。


 この信じがたい殺人事件の裏には何があるのか? とある心理学者はこう語った。

「結婚しても自分を愛されないストレスがヒステリーとなって、殺害へと及んだ。不思議な鏡がないにも関わらず、自分の子供ではない子供が“一番キレイ”と思い込むコンプレックスが凶行へと踏み出したと見ることができるだろう。
 ところが、これは女性だけでなく、男性側にも白雪姫コンプレックスがでてきている。この前も女性の連れ子である女子児童に対して暴行を起こしたのも記憶として新しい。これもまた男性が結婚しているにも関わらず、配偶者が自分を愛してくれない、“一番愛されている”のは連れ子の子供だ、というコンプレックスが引き起こした犯行と言える。
 離婚が多くなる中、再婚も増えてきている。そのため、子供連れの結婚するも多くなり、子供のいない側のコンプレックスが肥大化する恐れがある。再婚についてもう一度見直す必要はあるのではないだろうか?」


 白雪姫型殺人を広めたことで有名になった魔女と呼ばれた女も死刑になった。26人目の白雪姫を生み出さないために、再婚について少し考える必要があるかもしれない。心の中にある不思議な鏡に話しかける前に。

どっちかというと継母コンプレックスですね。

 6月17日の朝日ニュースで、児童虐待が4万件突破という記事があり、児童虐待の認知度があがってきました。虐待を受けて死亡した児童は03〜06年に295人いたとも書かれていました。

 最近はモンスターペアレントというわが子をかわいがりすぎる親がいる中で、子供を虐げる親、いわゆるネグレクトもいて、親の教育思想は極端化しています。

 よく考えてみれば、25人の白雪姫はモンスターペアレントを問題としたニュースから派生したものですね。けれど、私の書いた25人の白雪姫をその反対側ともいえる親を書くことになりました。

 白雪姫は、美を追求していた継母が内縁の子である白雪姫を殺そうとし、心が汚らしくなっていくところが面白いところです。おばあさんへと変装するくだりは、美を求めているにも関わらず、美から遠ざかったところが滑稽と言えます。

 しかし、これを現代風にする美を愛と置き換えてみると妙なリアルさを生み出します。

 ――夫から愛されないから子供をいじめる。だけど、夫は私がいじめた女児を守ろうとするから、その子を殺したい。

 なんともまあ、よくある児童虐待の動機に見えてしまいます。しかし、グリム童話に隠された物語の肝はここではないのでしょうか? 鏡は自分の心の中にあった妄想であり、美は自分が王女であり続けるアイデンティティ、その美を奪われた王女は自分の立ち位置をも奪うと思い込み、殺そうとしたわけです。(王様のくだりがないのでそれはありませんけどね)

 ネグレクトの親をテーマにした作品にモンスターペアレントが口に出す、なんともまあ、皮肉な話です。25人という数に踊らされず、白雪姫という物語を今一度、省みるのもいかがでしょうか? 毒を食らわば皿までといいますから。(意味が違います)

 インスパイア元―【作品募集】「25人の白雪姫」というタイトルの創作を募集します。